民事訴訟の流れ

地方裁判所における民事訴訟の大まかな流れを説明します。訴訟の進行は事案によって異なるので, あくまでも参考としてご覧下さい。
また, 簡易裁判所の訴訟手続( 訴額1 4 0 万円以下の場合は簡易裁判所となります) では少し異なる部分があります。

★ 訴訟提起
訴状を裁判所に提出し, 事件番号が決まります。

★ 第1 回期日
訴訟提起からおおよそ1 か月後に第1 回めの期日が開かれます。
被告は, 第1回目の期日に限り, 答弁書を提出しておけば, その内容を主張したものとして扱われます。

そのため, 欠席をしても被告に不利益はなく, 第1回目の期日に被告が欠席することはよくあることです。

※望ましいことはでないのですが, 被告の弁護士が「請求の原因については追って認否する」と記載しただけの1 枚の答弁書を提出し, 第2 回目の期日以降に具体的な主張を記載した書面を提出することがあります。こうなると, 第2 回目の期日までは審理が進まないことになってしまいます。

★続行期日
第2回目以降は,おおよそ1か月ちょっとに1回のペースで期日が開かれます。期日にあわせて,双方から互いに主張書面(準備書面)を提出していきます。また,併せて証拠となる書面(書証)も提出していきます。
主張→反論→再反論→再々反論などと書面を提出していきますので,双方の言い分が出揃うまでに半年~1年くらいかかることも珍しくはありません
なお,裁判の期日は弁護士が出廷するので,ごs本人は原則として尋問期日を除いて出席する必要はありません。

民事訴訟は非常に書面を重視する手続です。口頭で裁判官に説明したいと思っても主張を書面にして提出することを促され,きちんと聞いてもらえません。口頭では曖昧な部分が残るし,裁判官は非常に多数の事件を抱えているので口頭で聞いたことを覚えていられません。また,訴訟中に裁判官が異動で交代してしまうことがよくあるので,形に残らない口頭での説明はあまり意味を持たないからです。

そのため,その回に提出する書面の確認と次回までに提出予定の書面の内容を確認するくらいで,期日が5分もしないで終わってしまうことはめずらしくありません。ただし,複雑な事件などでは,30~60分くらいの時間をかけて審理の進め方を協議することもあります。

★証人尋問,当事者尋問
主張や書証が出揃い,争点がはっきりとしたら証人や当事者の尋問の期日が開かれます。普通は1,2回の期日で集中的に実施されます。

※当事者や証人の説明は事前に陳述書という形で提出しているのが普通です。したがって,いきなり新証人が法廷にあらわれて,新事実が明らかになるということはありません。証人が何を証言しようとしているのか,証人の申請をした当事者はもちろん相手方も分かっているのです。
尋問は,主尋問よりも反対尋問に意義があります。ときには証言の矛盾点をうまくついて嘘を言っていることがはっきりすることもあります。
また,当方に有利な事実を把握しているけど,確たる証拠がなく立証できない場合,そのことを反対尋問で証人や相手方本人に聞いて確認する場合があります(例えば,お金を借りたことを否定する被告に対し,ほかにも被告は借金があったこと,その借金を原告がお金を貸した日の翌日に返済したことを確認する場合など)。

★弁論終結
尋問の結果を踏まえた最終準備書面を提出して弁論終結となり,判決期日が指定されます。審理終結から判決期日までの期間はまちまちですが,概ね1~3か月程度です。

★判決言渡

民事訴訟では当事者が判決期日に出頭しないのが一般的です(世間の耳目を集めている事件は別です)。判決期日に出頭しても判決書はその日に受け取れないし,裁判官が読むのは判決の主文だけで,理由は読まないからです。結果を知るだけならば判決の言い渡しの後に裁判所に電話をすれば書記官から結果を教えてもらえるので,これで足りるのです。

★控訴
判決正本を受け取ったら2週間以内に高等裁判所に控訴することができます。控訴をせず,控訴されることもなければ第1審の判決が確定して効力が生じます。これによって解決となる場合もあれば,さらにその後の対応が必要となる場合があります。

★和解の話し合い
上記の期日の途中で,適宜,和解の話し合いもなされます。
特に,双方の主張,書証が出揃った頃,尋問手続が終わった頃に,裁判所から和解を薦められることが多くあります。
和解が成立すれば訴訟手続はそこで終了となり,紛争解決となります。

一般に裁判官は判決よりも和解を好む傾向が強いです。判決で白黒を付けるよりも双方が譲り合って合意に至った方が,しこりも残りづらく望ましい紛争の解決ができると考えているからでしょう。また,裁判官にとって判決を書く作業はとても大変です。和解で終了すれば判決を書かなくても済むので,ホッとするという気持ちがあることは間違いないと思います。
また,訴訟を始める前は和解なんてあり得ないと思っていた当事者が,訴訟の途中で和解をすることがよくあります。

訴訟が進み,双方の主張,証拠が出揃うと,弁護士は訴訟が始まった頃に比べてよりはっきりと判決の見通しが分かってきます。また裁判官が心証を開示して和解を勧告する場合もあります。そうなると,和解の方が得策だと判断できる場合もあるのです。

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